教員・研究室 LABORATORIES
研究室紹介
- 浅井 禎吾准教授
|
3号館203A
Tel. 03-5454-4458
E-mail: tasai@bio.c.u-tokyo.ac.jp |
- 研究内容
|
ゲノムに書き込まれた設計図を基に新しい天然有機化合物を創生し、医薬品開発に応用する
私たちの研究室では、糸状菌 (カビ) のゲノム上にコードされる未知二次代謝物を獲得し、新たな医薬シーズを発見することを目指して研究を行っています。糸状菌の作り出す多様な二次代謝物 (天然有機化合物) は、ペニシリンやロバスタチンに代表されるような有用薬理活性物質が多いことから、医薬品開発の重要な探索資源として認識されています。次世代シーケンサーによる糸状菌ゲノム解析が進むにつれ、未知なる二次代謝物の設計図 (生合成遺伝子クラスター) が数多く存在することが明らかになりました。そこにはいったいどのような二次代謝物の構造が描かれているのでしょうか。当研究室では、糸状菌のゲノム上に存在するユニークな設計図を見つけ出し、その情報をベースに、遺伝子工学的な手法と天然物化学的な手法を駆使して新規性の高い二次代謝物の獲得を目指す「ポストゲノム型天然物探索」を展開しています。獲得した天然物は、共同研究により様々な薬理活性を評価し、医薬シーズ探索へと応用しています。
【麹菌異種発現システムを用いるポストゲノム型天然物探索】
各自研究の流れは共通します。とはいえ対象の違いで得られる二次代謝物が異なるため、取り組む生合成遺伝子クラスターがテーマです。ゲノム上に眠る二次代謝物を呼び覚まし、真に新しく有用な天然物を手にしたいという思いで取り組んでいます。
1. 内生糸状菌の探索とドラフトゲノム解析
糸状菌の中には、植物や昆虫の体内という特異な環境で生育するものがいます。私たちの研究室では、実際に自分たちで身近な植物や昆虫から糸状菌を分離した菌について、簡易の同定後、特にユニークな菌について、次世代シーケンサーを用いてドラフトゲノム情報を取得しています。
2. ゲノムマイニングによるユニークな生合成遺伝子クラスターの探索
取得したドラフトゲノムの中から、生合成や天然物の知識に加えバイオインフォマティクスを駆使することで、新規性の高い二次代謝物をコードする可能性のある生合成遺伝子クラスターを探索しています。特に、ドメイン構成がユニークなPKSをコアとするクラスター、修飾酵素の組み合わせがユニークなNRPSやHPNクラスター、リボソームペプチド系化合物をコードする可能性のあるクラスターに興味を持っています。
3. 麹菌への遺伝子導入
着目したクラスターを構成する遺伝子を組み込んだ麹菌発現用プラスミドベクターを作成します。多くの遺伝子を効率よく導入し発現させるために、ベクターをカスタマイズしています。形質転換法を用いて作成したベクターを導入し、目的遺伝子クラスターを麹菌内で再構成します。
4. 導入した生合成遺伝子クラスターに由来する二次代謝物の単離と構造決定
作成した形質転換麹菌を培養し、HPLC分析により導入した生合成遺伝子に由来する二次代謝物が生産されているか確認します。続いて、大量培養し、培養抽出物から目的化合物の単離精製を行います。NMRなど各種スペクトルデータを測定し、獲得した化合物の構造を決定します。
|